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次に4区の分析結果ですが、水温は日当たりの良いため池の南側にあたる深水・浅水の除草区が高い傾向がありました。また4区でまんべんなく、しかも多数見られたマツモムシ、ヒメアメンボを除く24種について、それぞれの区の群集構造がどの程度似通っているかを調べると、除草区と放置区ではよく似ていましたが、深水区と浅水区ではかなり異なるものであることがわかりました。
また、ため池内での昆虫の分布状態を調べた結果、4区に均等にいるのではなく、特定の区に集中して生息している種もいることがわかりました。たとえば、マメゲンゴロウ、ミズスマシ、ヤスマツアメンボなどは、ため池内でも水の流れが目立つ深水・放置区にある流入口に集中して見られ、トビケラ類は浅水、深水の放置区で多く確認されました。トビケラ類については、そこに巣の材料の砂礫、植物片が多いからかもしれません。また、ホソミイトトンボは、ヒメホタルイのはえている浅水・除草区で多く見られましたが、これは雌がこの植物に産卵するためと思われます。このため池で採集されたゲンゴロウ類のうち、前述のマメゲンゴロウを除くヒメゲンゴロウ、コシマゲンゴロウ、シマゲンゴロウとガムシ、ヒメガムシなどは日当たりが良く水温も高い浅水・除草区に集中してみられました。
このように水深や草の密度だけではなく、日照や水の流れ、植生などによって池の中に微妙に異なる環境が存在し、水生昆虫に影響を与えていることがわかりました。今後、これらの環境要因をふまえた上で観察を行い、水生昆虫の多様性を高めるために必要な環境について考えていきたいと思います。

 

 

 

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